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9月になったある朝、あのうっとうしいカラスの夫婦はこつ然と姿を消していた。ようやく子育て中心の家族生活を終えて、山の方で集団生活をはじめたようだった。
翌日も、次の日も、黒い怪物は視界から完全にいなくなった。今まで悪い夢でも見ていたようだった。ぼくは安心して見上げる空を、久々に取り戻したのである。
カラスの親は子どもをしっかり見守っている。あのときも近くにいたのだ。やっと飛べるようになったばかりのわが子を追い払ったぼくを見て、アイツは危険な敵だとマークしたのだろう。きっとそうに違いない。
まるで人の心を読みきったような、あんなに頭のいいカラスには会ったことがない。今度会うときにはケンカしないで、仲良くなりたいのだが、まわりにいる黒いカラスの中の、どれがあのカラスなのか、ぼくにはさっぱり見分けがつかないのである。
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