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こんな新聞記事を目にした。見出しは「南極海氷2100年に25%消失」。海洋研究開発機構などのチームが試算したもので、温室効果ガスが現在のペースで増加するとそうなるという。
2100年といえば、いまから75年後になる。
ぼくは来年75歳になるから、75年の時間は感覚としてわかる。その感じるところを言葉にすれば、「すぐじゃないか。そんなに早いのか」。
この間、南極海だけではなく、当然、北極海の氷も、ヨーロッパアルプスやヒマラヤ、そしてグリーンランド、シベリアなどの陸地の氷も溶けていく。
そのころぼくはこの世にいないけれど、75年後といえば、もうすぐ満1歳になる孫のKo君がいまのぼくと同じ歳になるときである。
他人ごとではない。世界各地の若者たちが危機感を募らせて、こんなふうにした大人たちを批判して、環境保全運動に立ち上がるのも無理はない。
気になって、本棚に残しておいたレイチェル・カースン女史の『われらをめぐる海』を取り出した。あの環境問題のバイブル、『沈黙の春』を書いたアメリカの海洋生物学者で、1963年に出版された当時の大ベストセラーである。
少し抜粋してみよう。
わたしたちは海が上昇する時代に生きている。アメリカの全海岸にそって、1930年以来、海岸陸地測量部の検潮儀には、海面の連続的な上昇が感知されてきた。(略)
もし北アメリカ大陸で海面の上昇が100フィート(※30.48メートル)に達すれば(こんにち陸氷として凍結されている氷は、これくらいの上昇を起こすのに余りがあるほどだ)、大西洋海岸の大部分では、都市も町も、ことごとく水没してしまうだろう。そして、磯波はアパラチア山脈のふもとあたりで砕けるだろう。メキシコ湾に面した海岸平野も、水の下に横たわり、ミシシッピー渓谷の低地もまた、水面に没し去ることだろう。
この本が書かれたのは約60年前のこと。その後も海面は上昇を続けて、太平洋の島々やバングラデシュの海岸線はおおきく陸地の方へ後退している。
さきほどの新聞記事によると、2030年や40年に温室効果ガスの削減策を講じた場合、それぞれ10〜20年後に南極海氷の減少は止まって、増加に転じる結果になったという。
いったん溶けた氷がまた凍るというのだ。安心していいのだろうか。
だが、海水が凍りはじめても、あの元の壁のような分厚い氷が戻って来るわけではない。それどころか、氷がなくなるのを「待ってました」とばかりに飛びついて、新たな資源開発競争や領土争いまで起きそうな雲行きだ。
一難去って、また一難。まるで海の波のように、いつまでもこのくり返しである。
■子どものころから海が大好きだ。写真は母の郷里の大分県の過疎の村、波当津の浜を堤防から見たもの。自慢のおおきなハマグリはいなくなったけれど、澄み切ったきれいな水はいまも変わっていない。
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