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週刊誌の記者時代、うまく書けない原稿に泣きたいほど苦戦して、締め切りの日は決まって徹夜だった。3Bの鉛筆ではじめから何度も、何度も、書き直すのは、つくづく体力勝負、格闘技だと感じていた。
先輩記者たちもそうだった。取材の疲労で、両目はしょぼしょぼして、どの人の目も赤い。デスクは湯呑に酒を注いで、ちびりちびりやりながら、短くなった煙草の吸殻を灰皿いっぱいに突き立てて、ぼくたちの原稿のあがりを辛抱強く待っている。編集長も率先して完徹である。
とにかく、仕事は体力がいちばん。
いまそのことをまた実感している。しばらくブログを書けなかった。たったこのていどの文章を書くだけの体力も、気力もわいてこなかった。
ここ2か月あまり、朝までろくに眠っていない。睡眠不足でふらふらして、じっと立っていられない。団地の階段を登るときも、手すりにつかまらないとちょっと怖い。
でも、見た目はふつうだから、がんで闘病中の身とは気づかれないだろう。
この原稿は病院内の化学療法室で、抗がん剤の点滴を受けながら書いている。終わるまで5時間もかかる。
現在、がん細胞に向かって総攻撃中である。そうおもえば、ファイトが出てくる。
顔なじみになった看護師さんがこんなことを言っていた。
「△△さんは、意外にお元気でびっくりしているんですよ。強い薬を使っているので、ぐったりしている人が多いんです」
どうやら、これでもぼくは元気な方らしい。確かに食欲もあるし、酒もうまい。顔色も悪くない。ときどき大きな声をあげて、昔はやった歌を気分よくうたったりする。がんに負ける気はしない。
からだがきついときには、ささいなことでも我慢せずに、医師や薬剤師、看護婦さんたちに言う。彼ら、彼女たちもそうしてほしいと言っている。今回は軽い睡眠導入剤を出してもらった。
このみなさんはぼくを支えてくれるために編成された医療チームだとおもっている。こういう気持ちは相手にも伝染して、いい仲間になってくれるものだ。
今回の化学療法は3日続けて点滴をやり、11日間休むのがひとつのサイクルで、2週間おきに繰り返す。きょうで3回目になる。いまのぼくはこういう状況に慣れる「新しい習慣」を身につけようとしているところである。
(病院での原稿書きはここで終わり)
さて、話は変わって、うちのカミさんも新しいチャレンジの一歩を踏み出した。午前11時に、自宅から歩いて6、7分のところにある福祉施設まで、履歴書を持って、パートの面接に行って来た。
カミさんにとって、生まれて初めての職種である。福祉施設といってもさまざまで、そこにはぼくたちとは無縁の、まったく別の人生がある。
だが、採用されるかどうかも、はたして続くがどうかもわからないし、個人情報のこともあるので、これ以上は触れない。今日は彼女も疲れている。
取り留めもないことを書いたが、書いて今日が終わる。なんだか安心した。
■団地のなかの歩道。緑が多くて、安全で、公園のようにも見える。
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